サン・フアリーニョ農園が描く、コスタリカの新しいかたち
ウェストバレーの丘で、コーヒーはもう一度つくり直された
カップから立ちのぼる香りは、ラム酒やモルトを思わせる、甘く奥行きのある香り。
一口含むと、カラメルのような甘さとスパイスのニュアンスがゆっくり広がり、クリーミーな質感が長く残ります。
コスタリカ・ウエストバレー。
この土地で生まれた「サン・フアリーニョ農園」のコーヒーは、ただ個性的なだけのアナエロビックではありません。
その背景には、農園そのものを“もう一度つくり直す”ところから始まった、静かで粘り強い挑戦の歴史があります。
農学と工学が出会った、小さなモデル農園
サン・フアリーニョ農園を運営しているのは、農学者の**トマス・グティエレスさんと、エンジニアのアラン・バルガス**さん。
異なる専門分野を持つ二人がタッグを組み、2007年にこの農園を取得しました。
当時の農地は、長年の栽培で土壌が疲弊し、決して理想的な状態ではなかったといいます。
それでも彼らは、短期的な収量回復ではなく、「この土地が、これから先もコーヒーを育て続けられるか」を問い直すことを選びました。
土壌分析、葉の栄養分析、微生物環境の把握。
データに基づき、必要な施肥だけを、必要な量だけ与える。
シェードツリーを植え、被覆植物で地表を守り、殺虫剤は使わない。
サン・フアリーニョ農園は、いわば“動いている研究室”。
農業を勘や経験だけに頼らず、科学として積み上げていく姿勢が、農園の隅々まで貫かれています。
気候変動時代に向けた品種選択という答え
この農園のもう一つの特徴が、品種選びです。
ここで育てられているH15は、カトゥアイとエチオピア系エアルームを掛け合わせたF1ハイブリッド。
病害に強く、乾燥気味の環境にも適応しやすい。
それでいて、エチオピア由来の香りの複雑さをきちんと持っている。
気候変動が進む中で、「美味しさ」と「育て続けられる現実性」を両立させるための、現時点での一つの答えが、このH15という品種です。
サン・フアリーニョ農園では、伝統品種に固執するのではなく、
“この土地にとって、次の世代に何を残すか”という視点で、品種の更新を進めてきました。
発酵を操るのではなく、見守るという姿勢
このロットが持つ、ラムやモルトを思わせる香りは、
二段階の発酵をともなうアナエロビック・ナチュラル精製によって生まれています。
完熟チェリーのみを選別し、果肉を残したまま48時間の発酵。
その後、小型タンクでさらに48時間、嫌気性発酵へ。
ただし彼らが重視しているのは、「強い発酵感をつくること」ではありません。
温度と時間を細かく管理しながら、香りが暴れすぎないよう、
コーヒーそのものが持つ甘さと質感を引き出すこと。
結果として現れるのが、
酒感はあるのに、雑味がなく、口当たりがとてもなめらかな一杯です。
店主が感じた、このコーヒーのいちばんの魅力
正直に言うと、このコーヒーは万人向けではありません。
でも、それでいい。
焙煎中、立ちのぼる香りははっきりとラム酒。
カッピングでも、「あ、これは好き嫌いが分かれるな」とすぐにわかりました。
それでも仕入れを決めたのは、
このクセが“作られたもの”ではなく、農園の思想とプロセスの積み重ねから生まれていると感じたからです。
派手さのためのアナエロビックではなく、
土地と品種と人の考え方が、そのまま香りに表れている。
届いた直後、「ちょっと酸が強いかな?」と思われたら、少し時間を置いてみてください。
2週間ぐらい置くと、良い具合にエージングが進んで、酸が弱まり、ここなしか甘みも前に出て飲みやすくなりますよ。
日常から少しだけ離れたい夜に
このコーヒーは、忙しい朝の一杯よりも、
一日の終わりに、少し気持ちを切り替えたい時間に向いています。
アルコールは飲まないけれど、
ウイスキーやラムの香りが好きな方。
発酵系のナチュラルやアナエロビックを飲み慣れてきて、
「次の一歩」を探している方。
そんな方にこそ、手に取っていただきたい一杯です。
「今日はちょっと、いつもと違うコーヒーを飲みたい」
その気分に、きっと応えてくれると思います。
コスタリカ サン・フアリーニョ農園 アナエロビック・ナチュラル
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